紅玉堂について
紅玉堂書店は、大正9年(1920年)から昭和6年(1931年)までに数多くの文芸書(主に詩歌)を出版した。
国会図書館収蔵数は200を超える。紅玉堂書店店主 前田隆一(1897-1932)の姪 歌人辻下淑子(1925-2016) は、早逝した伯父の事業を継承するような気持ちで新紅玉堂の名で出版を始め、『2000年記念 紅玉堂書店所蔵短冊集』の後書に以下のように記している。
紅玉堂書店は、大正から昭和の初期にかけて、私の伯父(母の兄)、前田隆一が経営していた出版社です。東京市日本橋区大工町(現、中央区)にありました。
当時、歌壇唯一の総合誌「短歌雑誌」を初め、多くの歌集や歌書を発行していました。出版目録はありませんが『現代短歌大事典』に、尾上篤二郎著『歌はかうして作る』や、窪田空穂歌集『鏡葉』、坪野哲久歌集『九月一日』など、紅玉堂書店発行の本が、十数冊記載されています。
前田隆一は、昭和七年に三十七歳の若さで他界しました。生前に、諸家から直接、書いていただいたと思われる短冊が幾らかありますので、その中から選び、2000年記念として短冊集を作ることにしました。伯父も喜んでいると思います。
2000年9月 辻下 淑子
辻下淑子著『風のゆくえ』(1985)には紅玉堂と前田隆一についての随筆がある。
前田隆一の十代の習作